本当の私は甘いかも。
2人目の悪魔
今日はあいにくのどしゃ降り。
静かな部屋には雨の音がやけに大きく聞こえる。
その雨はまるで私の心の中を写しているようだ……なんてね。
コンコン
「ふぁーい」
このノックの音は、西条さんだし有理お嬢様っぽくなくていいか~。
ベットの上でゴロゴロしたまま気の抜けた声で返事をしたものの…
「有理お嬢様。大和様がお出でになられました」
うげっっ。
西条さん怒ってる…言葉の節々に鋭いトゲがあったよ…
つかもぅ来たのかよあの悪魔大和!
あーとにかくゴロゴロしてる場合じゃなくて…
私はアタフタとベッとから飛び起きソファーに腰掛け背筋を伸ばし、手元にあった本をとりあえず開いた。
お嬢様スイッチオン。
優雅に読書をしていましたの、オホホ
というようなオーラを漂わせ
「どうぞ」
本に視線を落としたまま声をかける。
「失礼いたします」
ガチャリと扉が開けられ、中に入ってくる2つの足音。
「それでは、大和様も、ゆ・う・り、お嬢様もごゆっくりと」
“有理”の三文字を強調して、部屋を去っていった西条さん。
その間一回も顔を上げなかったのは、有理お嬢様になりきっていたのか、西条さんが怖くて顔が見られなかったのか…。
自分でも分からないけど、西条さんがいなくなって私はフーと息を吐き本を閉じた。
「はぁ…疲れた」
「お前も何かと大変そうだな」
「大変ですとも。
でも今日誰かさんが来なかったら1日中部屋にいて、有理お嬢様の振りなんてしなくてよかったのになぁ。」
横目で奴を睨みながら呟くも、本人は聞かないで私の向かえ側のソファーに座って、携帯をいじりだす。
「……………」
「……………」
あの、質問があります。
あなたは何をしに私の家?に来たのですか?
携帯をいじるならご自分の家でも好きなだけ出来ると思うんですけど……
そもそも大和が私の家に来るって昨日の寝る直前に有理お嬢様の携帯に電話してきて、
「やだ、だめ、来るな」
「お前に拒否権なんかねぇよ。分かってるのか?俺は今すぐにでもバラせ…」
「はいはいはい!!どうぞ来て下さい大歓迎
じゃあね」