本当の私は甘いかも。



「頑張っても無駄だって」



「ちょっと!なら手伝ってよ。このままならこの部屋から出られないんだから」


ドアから目を外さないで言った途端大和が笑い出した。



は!?そこ笑うところ?



「何で笑うの!?」


「だってさ、ドアが開かないのは俺が押さえてるからなのに、それに気が付いてないって



天然か馬鹿かどっちだよ」



………。



私はそっと上を見上げると、確かに大和と片手がドアを押していた。



………。



「歌穂?」



動きを停止させた私に不思議そうに大和が声をかけてきたけど、答える代わりに睨みつけてやった。


さっきから、大和は余裕なのに私ばっかり振り回されるなんて、気に入らない。


「………顔赤っ」



「んなっ!」



なのに、私の顔を見てまた笑うこいつのせいで恥ずかしさが舞い戻ってしまう。


「くーーーーこの!!!」



恥ずかしさを隠すため、大声を張り上げ右手を振り上げた。


そして私のパンチが大和のお腹に当たる寸前…



「有理お嬢様!お客様出ございます」



「ひゃいっっ!!!」



扉越しに聞こえた西条さんの声にびびってパンチはピタリと止まった。



お、お客さん?誰?知らないよぉぉぉ!


突然のことにオロオロする私とは対照的に大和はスッと私から離れソファーに腰を下ろしていた。



「客……あいつか」


なんて不機嫌そうに呟きながら。



「えっ?誰か来たか…」



「有理お嬢様?入ってもよろしいでしょうか?」



あわわわ!早く有理お嬢様になって返事しなくちゃ。



私は一度大きく息を吸って精神を落ち着け大和の隣に座ってから“どうぞ”と西条さんに答えた。




扉が開き、入って来たのは西条さんと男性。



金髪で長身な彼は一見チャラそうだけど、まつげが長くて優しい瞳をしていた。


耳には宝石のピアス、服はブランド『right』のマークが入っている。



あー見たことある!


……でも誰だっけ?


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