本当の私は甘いかも。
「じゃあ、その有理お嬢様はいるとして…私に何の関係があるんですか?」
「はい。ここからが本題です」
私の問いかけに、おじいさんは重々しく話す。
「立花様には有理お嬢様の代わりをして頂きたいのです」
「……え?」
おじいさんの発言に私は間抜けな声をこぼしていた。
有理お嬢様の代わり?
「1ヶ月300万円のバイトだと思っていただいて結構でございます。その間は社長のご自宅に住んでいただき有理お嬢様として暮らしていただきたいのです」
「おっしゃている意味が分からないのですが…」
話が急すぎて私はついていけていない。
1ヶ月300万円のバイトって…もっとよくわからないよ。
「左様でございますか…ですが今は一刻を争うのです!とにかくバイトを引き受けて下さい」
おじいさんは強い口調で私に詰め寄ってきた。
それでも私は納得できない。
「急にやってきて…バイトとか代わりとか言われても困りますし、一刻を争うと言われても何のことかさっぱりわかりません」
きっぱりと言い切った私に対して、おじいさんはゆっくりとした動作で私の手を取って強く握った。
その行動に戸惑いを隠せない。
でもおじいさんがしっかりと向けてくる目から逸らすことが出来なかった。
「大変申し訳ありませんでした。しかし、これは我が社の未来を大きく左右する事態でして、立花様以外にはどうすることも出来ないのです。どうか…どうか我が社を救うためにご協力して頂けないでしょうか?」
うっ…
私以外にどうすることも出来ない問題…会社の未来がかかっている…。
重いたい内容に私は言葉を詰まらせる。
それにおじいさんの必死の懇願に、私は折れた。
「分かりました…とにかくお話しはしっかり聞かせてもらいます」
その瞬間、おじいさんの顔はぱっと輝きを放ち満面の笑顔を咲かせた。
「ありがとうございます!それでは早速、社長のご自宅に向かいましょう。お話は車の中でさせていただきますので」
こうして私は黒いリムジンに乗り、社長の自宅へと向かったのだった―。