本当の私は甘いかも。
淡々とした調子で話しているけど、雰囲気がイラついている。
「なぁ歌穂泊まっていいだろ?」
少し目が潤んでいる守が私を見つめる。
そこ私に振らないでよ……。
守の隣をチラッと見ると、鋭い視線が私に刺さっていた。
怖っっっ
この2つの視線のせいで何て言っていいか分からず、首を傾げた。
「うーんどうだろ…」
「じゃあいいじゃん」
「ダメだ馬鹿」
「お前に指図されたくねぇし」
ケンカしないで下さい。
ぎゃーぎゃー始まる守と大和の言い合いに途方にくれていた時、救世主かと思われるノックがされた。
その途端2人はピタリと口を閉ざす。
「大和様。お車がお見えになりました」
「あぁ、分かった」
大和はそれだけ言って立ち上がると、守の首根っこを掴んだ。
そのまま容赦なく引っ張り出し無理やり連れて行く。
「うぎゃっ」
守は必死に居座ろうとしていたけど、大和には勝てずズルズル引きずられていく。
そして3人で玄関までやって来た。
ここまで来ると守も諦め大和に手を放してもらっていた。
「はぁ~ぁ。歌…有理また今度ね。連絡するよ」
守が“歌”の文字を発した瞬間大和が守の足を踏んでくれたお陰で周りにいたメイドさんに聞かれないですんだ。
靴を履いきメイドさんから傘を受け取った大和が一度扉まで歩いて行ったのに、くるりと振り返って私の目の前に立ち
「またな」
そういって頭をクシャッと撫でてきた。
その行動に私は顔が赤くなるのを感じながら見えないように俯いた。
「うん。またね」
「あっずるい。俺も」
それを見ていた守は大和を押しのけ私の目の前に立つと、
チュッ
!!!!!!
私の額にキスを落とした。
あまりに驚き過ぎて目を見開きならが、心臓の速度が加速する。
い、いぃい今私のでこに!!!
「やっぱ反応も可愛い、」
バシンッッ
守が言い終わる前に大和の強力な一発が頭に直撃し、余りの痛さに言葉もないみたいだ。
「行くぞ!」
そんな守の首根っこをまた掴んで大和はズカズカと外に出て行った。