本当の私は甘いかも。
ついに辿り着いた扉の前で1つ大きく深呼吸して、私は扉を押し開けた。
そして中に入ると、そこは輝かしいぐらいにゴージャスな部屋だった。
大きなシャンデリアには本物の宝石が埋め込まれていて、ソファーやイスは動物の毛皮で出来ている。
絨毯もフカフカで、家具も1つ1つ細かい所までこだわっている感じがし、しかも見るからに高そうな壺や絵も飾られていた。
す、凄い…さすが社長。
私はついキョロキョロと部屋を見回していると、西条さんに小さく小突かれた。
口パクで“お嬢様らしく”と怒られる。
すみません、ちゃんとします。
心の中で謝り、私はなるべく堂々と部屋の奥に歩いていく。
そして社長の座っている少し手前で立ち止まる。
社長は気が付いていないようで黙々と本を呼んでいる。
社長は深い皺が刻まれている顔を更にしかめているためかなり怖い。
「一郎様。有理お嬢様が参られました」
西条さんが穏やかな声色で声をかけた瞬間
ガタッッ
社長は本から顔をあげ立ち上がり、私の目の前まで歩み寄ってくる。
社長の顔は険しいままで、私をジロジロとガン見している。
まさか…もはやバレた!?
目を逸らして逃げたい衝動をぐっとこらえ、“私は有理だ…”と心の中で何度も繰り返した。
すると今度は両肩をがっしりと掴まれ
「ゆ、有理~会いたかったぞ!my エンジェル」
次には笑顔の社長にきつく抱き締められていた。
く、苦しい…酸素を…
助けを求め西条さんに目線を向けると、西条さんはメモ帳に何やら書き付け社長からは分からない位置から私に見せた。
“パパ気持ち悪い”と言って下さい。
カンペですか!?
まぁ、とにかく助かる為にはこれしかない。