緋~隠された恋情
その日帰った俺の部屋のドアを叩いた男。


新だった。


「平。話が聞きたい。」


「遅いな。今まで何してたんだよ。」


「こっちだって色々あるんだよ。」


「ありさよりも大事な色々ってどれだけあるんだよ。」


新は、言葉を詰まらせ、ただ、俺を見つめた。


「俺はありさを大切にしてきた、

 そしてお前を頼りにしてきた。」


「ああ。知ってたさ。」


「それで?

 お前はどうしたいんだ

 なんであんなことを!」


「嫌いなんだよ。」


「お前も

 ありさも

 この街も


 大嫌いだからさ。


 めちゃくちゃにしてやりたかった。


 わざと時間をかけて、

 あの日を楽しみにしてたんだ」



「あの日って……」


「俺たちの関係を知って、

 お前が心底傷ついた顔を見せた日さ。

 お前が傷つき絶望することを見るのが俺の願いだったのさ」


あの時と同じ表情の新

あの時の気持ちが蘇り、

くくっと笑みが漏れる。



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