緋~隠された恋情
「まあでも、お客さんも増えたんだし、
下宿の人たちも、その友達とかも、
マイナスは、ただのマイナスではないんじゃないんだけどね」
「あ、あの、兄にも一応伝えておきます。」
「あ、ううん、ごめん愚痴だけよ、
気にしないで。
ありさちゃんなんて
係でもないのに手伝ってくれてるのにね。
やっぱ景気が悪いと心まで、いじましくなるのよ。
ああ、いやだいやだ。」
「いえ、お気持ちはわかりますから。
あとは私がやりますから、
開店準備行ってください。」
「そ、そう?じゃあ、お願いね。」
気まずそうな表情で、
勝手口を出て行った。
真央さんが言っていることは分かるのだ、
人はボランティアじゃ食べていけない。
いいことだってわかっていても、
やれないことなんて世間には山ほどある。
こうやって少しずつ不平不満がたまり、
結局は中心でやっているものが割を食う。
中心は会長のお兄ちゃんだから。
あ~あ、
お兄ちゃんは人生、生まれてからずっと割を食いっぱなしだね。
一番の重荷の私が言うのもなんだけど。