緋~隠された恋情
「私を捨てるの?」


「な?」


「お兄ちゃんはいつだってそう。


 私を必要ないように振舞う。


 平から守ろうとしていたくせに。


 こんどは私を一人にするの?」



「そういうつもりじゃな…」


「そう、

 やっと判った気がする。


 お兄ちゃんはいつだっていい家族だった。


 だけど、

 お兄ちゃんはいつだって突き放して

 私を一人にしようとする。


 そうだったんだね。


 知ってたんだものね、


 知ってて黙っていたお兄ちゃんは、

 私はいずれこうやって捨てればいいと思ってたからなんだね。」



「違う!

 それは違う

 ありさに、お兄ちゃんて呼んでもらえるのが嬉しくて。


 いつだって自慢のお兄ちゃんでいたいって思ってた。」


「自慢だったよ。

 だけど……


 だけどお兄ちゃん!

 私は苦しかった。


 お兄ちゃんと一緒にいると苦しかった。


 お兄ちゃんじゃやなの

 ずっとそばにいたいんだもの。


 離れるとか考えるのは嫌。


 お兄ちゃんは違うの?

 やっぱりあたしは邪魔なだけ?」
 




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