緋~隠された恋情


コホン!



私たちの他に待合室にいる人が、

聞くに耐えないあたしたちのやりとりに

咳払いした。


「すみません。

 ありさ病室行こう。」


「いかない。」


「なんで。」

「もう退院だもの。手続きして帰るから。」


「そうなのか?あ、そういえば荷物…」


あたしがまとめてきたボストンバッグを見て驚いた顔をしている。

本来なら午前中に退院だったのに、

お兄ちゃんが迎えに来なくて午後まで引っ張ってしまった。

その上、あの騒ぎ

たまたま来てくれた鮎川さんが手伝ってくれたおかげで

部屋を空けることができた。


「会計して来てね。」


あっけにとられた顔してるお兄ちゃんをに、

バッグを押しつけた。


「あ、う、うん

 ま、待ってろ。」

慌てて会計に行くお兄ちゃんに。


「うん」

と小さく頷いた。
 













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