緋~隠された恋情


他人から聞かされると思わなかった、けど、

いつか。

それは恐れていたことだった。


私がお兄ちゃんを必要としなくなったら、

お兄ちゃんはお店を閉めてどこかに行ってしまうだろう。


でも、

それは、ちょっと前までの話。


確信があるわけじゃない、けれど、


けれど、何かが変わってきている気がする。





神さま、

もしあなたが本当にいるなら


お兄ちゃんと私を会わせてくれたのは、

気まぐれなんかじゃないですよね。


私を家族としてお兄ちゃんに与えたのですよね。


だとしたら、私は生涯そばにいる権利があるはず。


そうでしょう?



この期に及んで、私から、お兄ちゃんから、

たった一人の家族を取り上げたりしないでしょう?


鮎川さんの続いている話はそのまま私を素通りして、

窓の外に消えていった、






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