緋~隠された恋情
「ありささん?」


「お兄ちゃんはどこにも行きません。

 いえ、

 行かせません。」


私があまりにも、きっぱり言ったせいか、

ちょっと驚いた顔して、

あたしの顔を見ていた鮎川さんは、

 
小さく頷いた。



「そう、

 やっぱりよけいなお世話だったなかしら、

 ごめんなさい。


 …でも、


 おせっかいついでに、

 これ渡してもらえるかしら。」


私は、首を横に振りながら

彼女から薄茶色の封筒を受け取った。



「これは?」


「スカウトよ。」


「スカウト?」


「うちの会社にどうかと思って。


 食品管理部に欠員が出たから

 受けてみたらどうかと思って。」



お兄ちゃんが、会社員に?





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