緋~隠された恋情
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お兄ちゃんが会計を済ませて戻ってくる。


お兄ちゃんに言わなきゃならないこと

たくさんある。





上手に言えるだろうか。



今までのことが頭の中をめぐるけれど、

あたしはそっと瞳を閉じて、

心を落ち着かせる。



あの一瞬、あたしは死のうとした。


死ぬ前にもっときっと

出来たことがあるはずなのに。

感情が爆発して、死ぬことですべてから逃れようとした。


死ななくてよかったと、

今は切に思う。


私は生きている。


徹平を探しに行ったとき、

身を呈してお兄ちゃんが守ってくれた命

なくさないで本当に良かった。


生かされている。


それはきっと意味があるはずよね。


さっきもらった茶封筒をギュッと握り締めた。


歩いてくるお兄ちゃんに笑顔を向け叫んだ。



「お兄ちゃん!」








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