緋~隠された恋情
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「仲野先生、次の授業お願いします。」

緊張した面持ちで

二人声を揃えていう。


「はい、1-3ですよね。

 第2理科室で、実験します。

 このプリント配ってあらかじめ読んで待っていてください。」


「はい。」


入学したてのあどけない中学一年生に思わず笑みがこぼれる。


私は、私立中学の欠員教員の枠にかろうじて引っかかり、

正規の教員として採用され、

この4月から教壇に立っている。



「仲野先生もう慣れましたか?」

「はい。」

となりの席の長谷川先生は、40後半の女の先生。


学年主任で、いろいろと世話をしてくれる。


娘さんと同じ年ぐらいらしい。


私が両親もなくひとりでいるのを不憫に思っているようだ。


「高校とは勝手が違うでしょう?」


「そうですね。でも楽しんでやらせてもらってます。」


「それは良かった。

 頑張ってくださいね。」



「はいありがとうございます。」


教材をかき集めて、

職員室を出る。


白とグレーの無機質な床に

教室から漏れる子供たちの足音やはしゃぐ声が反響する。


カツカツとサンダルを鳴らしながら

教室へ向かう。


それは、

わたしの生きている証のように強く響く。









 
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