緋~隠された恋情
しばらくして私たちのところには弁護士の人が訪れ、

知っている一切のことを口外しないようにと、

大金を残していった。


お兄ちゃんはそれを断ったけれど、

私はこれで縁が切れるならと受け取った。


全く愛情がなかったかと聞かれれば、

ゼロだと言い切れるかどうかは

難しいところだ。


何年も抱かれ続けた男なのだから。


けれど、女は薄情だ。


愛する人を手に入れた今、

平のことで煩わされたくないと言うのが正直な気持ち。


無いことにする。


それは願ってもない話だった。


どうやら平は海外の両親の下で、

リハビリ、療養しているらしい。


ていのいい厄介払いを親戚の人たちにされたのだろう。


平の一族は昔からの大きな旧家で、代議士の多い一族らしい。


そんな一族にとってラブホテルで殺されかけた彼は、

スキャンダルになりかねない。


平は、あの高校の次期学園長に決まっていたようだったが、

今となってはそれも白紙になったらしい。









私たちの歪んだ3角関係は、

平が記憶をなくしてしまったということで、

終止符を打ったのだ。



長く続いたという割に

あっけない幕切れだった。


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