緋~隠された恋情
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真っ白な部屋。



気がついたとき、俺は一体ここがどこだかわからなかった。



それどころか、自分がいったい誰なのかも判らない。



ここが病院で、医者や看護師の質問で、

なにかの事件に巻き込まれたらしいことは判ったが、

それについて誰ひとり事実を掴むことができなかったらしい。



思い出そうとするとひどく辛く吐き気にも襲われるため、

しばらくは考えることもやめていた。





ぼんやりとしていると、

誰かが病室にやってきた。


色白の顔の小さな鼻筋の通った女の子だ。


「誰?」


と声をかけると、

眠っていたと思ったらしくひどく驚いていた。



「植木先生?」


そう言って彼女はそばによって来た。


「君は誰?


 君は知ってる?

   

 僕はいったい誰なんだろうか」



彼女は一瞬驚いたけれど、


「あなたは植木平。

 あたしの兄の友達よ。」


そう言ってにっこり笑った。


「そう。君のお兄さんは俺の友達なのか。」

と、つぶやくと、


「兄を呼んでくるわ。

 あの、大変でしたね。」


と優しい声をかけてくれた。


「ありがとう。」


笑顔を向けると。


困ったように笑い返してくれた。


なんとなく胸がいたんだ。


俺はもしかしたら彼女が好きだったのかもしれない。








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