緋~隠された恋情
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「平。今日は具合どう?」


「母さん、うん。割と気分いいよ。」


日本の喧騒の中から

両親の住むワシントンにきて1年が経とうとしていた。


しばらくは、病院に入院し、診療を受けていたが、

記憶の部分がすっぽり抜けてしまっている以外は、

身体等には大きな問題は見られないということで、

今は、自宅療養をしている。


両親と共に暮らした幼い頃の記憶は戻ってきたのだが、

両親と離れ暮らすようになってからの、高校時代辺りからの記憶は

なかなか思い出せない。


ドクターはその辺に思い出したくない原因があるかもしれないが、

無理して思い出す必要はない助言を受けた。


俺も心の中で、思い出そうとすると胸騒ぎを起こしたりすひどい頭痛がするので、

その助言に従って行動している。


両親の元で暮らす毎日は心穏やかに過ぎていく。


時折思い出すのは、病院に来てくれたあの子のこと。


困ったようなそれでいて優しいあの子の笑顔に

『いつか会いに行きたい』

そう思うと、心が温かくなる。


俺はきっと、彼女が好きだったと、

それは確信していた。



「あら?」


「どうしたの母さん?」


「日本からあなた宛にポストカードが届いているわ。

 MY SON?

 あらかわいい。生まれたばかりかしらね。

 あなたのお友達からかしら?」


「誰?」


「ええとね、

 K.SAKURABA

 知っている?」



「いいや?知らないなあ。」


「そのうち思い出すわよね。

 可愛い子ねえ。


 なんか、あなたの赤ちゃんの頃に似てる気がするわ。

 ほら見て。」


「ふーん?

 赤ちゃんなんて皆こんなかんじじゃないの?」


「そうかしら?」


「それより母さん腹減った。エッグサンド作って!」


「はいはい。もうっ子供みたいなんだからっ」


「いいだろう好きなんだ。母さんのエッグサンド。」






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