緋~隠された恋情
*。+.。*+*。。*.

「ただいま」

「あ、しんちゃんお帰り。」

ふわりと

目の前に広がる風景

ああ、

家庭だ

湯気の先に見える愛しいもの


「どうしたの」

首をかしげて俺を見上げるありさに、

胸が締め付けれられる。


「あ、いや。」

「お疲れ様、待っててもう少しでごはんにするね。」

鼻歌交じりに再び料理を始めるありさ。

俺は目を細めてその背中を見つめる。


------・…


忘れない。

1人座っていた

商店街のベンチ

雪をよけられる場所に身をまるめて、

このまま死んでしまうのかもしれないと思った。


俺を置いて行った母親シャッターを開けた時の驚いた父さんの顔


あわてて毛布を持ってやってきた母さんの顔


熱のまにまに映る小さい女の子の顔


音のない白い銀色一色の世界に、

やさしさという魔法が、

俺の中にしみ込んだ瞬間だった。

何をしても褒められて、

何をしても受け入れられる。

そんな当たり前な日常が、

俺の中の宝物だった。



『また、捨てられるかもしれない。』

どこかそんな凶悪観念にさいなまれ、

悪夢で目が覚める。


トラウマなんてもので片づけられない、

しみ込んだ恐怖。


けれど、


そばにはいつも君がいて

俺の手を握り

「大好き。」

といつも笑顔をくれた。


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