緋~隠された恋情
この先こんな平穏が
いつまでも続くのか不安になる。
温かい家庭像を思い浮かべる度に、
捨てられたあの日の
何処までも無音の、
暗闇の白
イメージでは夜明け前の天国の情景。
しかし記憶の片隅には地獄絵として焼きついている。
大人になってもなお、
引き戻される、
幼い日の記憶。
「-----------っちゃん
新ちゃん大丈夫?」
「あ、ああ……」
「夢見てたの?
また怖い夢?」
「……っごめん
なんか疲れてんのかな?]
びっしょりと濡れたTシャツが肌に張り付いて
気持ち悪い。
ありさの手がすらりと伸びてきて、
俺の頭を抱きしめる。
「私じゃダメ?
一緒にいても休まらないの?」
「そんなことないそんなことないよ、
ありさ、
お前はいつだって俺の救いなんだ。」
こうやって俺の不安は、
ありさにまで感染してしまう。
幸せなはずの今に、
過去が覆い隠せたならいいのに。