緋~隠された恋情
「奇跡ねえ?」

「もうっ、いいよ新ちゃんの分は揚げないから、

 自分で作って食べればいいよ。」

なぜかムキになるありさが妙にかわいくて、

なんだか、さっきまでの自分の中で墜ちていた部分が

ぱあっと開けた感じだ。

それに、

企画の段階から参加して作った製品が、認められて、

更に躍進しようとしているのに、

それが、納得がいかないとか落ち込んでいること自体、

俺はなんて後ろ向きなんだろう。

駄目だよな。

「なあ、ありさ、

そのコツって何なんだ?」

「うん、冷凍したまま火にかける前から油に入れておくとか、

 ラードを使ったほうがいいとか、

 180度の適温であげるとか、

 色々言われてるんだけど、

 やっぱり解凍してあげたほうが、

 カラッと揚がるの。

 解凍しても衣がはがれたり、べったってしないように、

 8分解凍してあげるのがベストだって私は思ってるの。」


「へえ?」

「見てて?」
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