緋~隠された恋情
目を細めて、

コロッケを頬張り過ぎて咳き込むありさを見つめた。

出会ったときから、

心の支えだった女の子。


兄妹として過ごした日々。


何よりも守りたい存在。


父さんたちは

世界一素敵な宝物を残してくれた。


今までだって、沢山のものをもらった。


だから、今度は俺が与える側になりたい。


本当の家族、

そう、自分の家族をこれから作りたい

誰よりも愛しいありさと共に。


「ありさ」


水を一気飲みして、

やっと落ち着いたありさに声をかける。


「本気で結婚しないか、俺たち。」


ごとんっ



ありさの手から離れたコップは

割れることなく床に落ちて、

小さな水たまりで円を描いてくるくる回っていた。
< 219 / 238 >

この作品をシェア

pagetop