緋~隠された恋情
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外部事業者との合同会議は、

社屋近くの系列ホールを

仕切って行われた。

概ね、企画通りにも催されることが決定し、

時間より早く解散となった。

「仲野さん、

 ランチでも一緒にどう?」


鮎川さんが笑顔で誘ってきた。

「え、でも、皆さんは?」

「もちろん一緒に。」

「あの、弁当があって。」

「ああ、妹さんの?」

「え、ああ、妹っていうか、

 あの……」

「ああ、そうかお二人は恋人同士になったんでしたっけ?」

くすくすと笑われ、

頭を掻く。


彼女には、色々と知られていて、

隠しごとができないな。


苦笑いがこみ上げる。

「ちゃんと、しなくちゃいけないって思ってるんです。

 今のままじゃ、

 兄妹の時と変わりませんから、

 居心地がいい分、色々いい加減になりそうで…」


「結婚とか?」

「はい。」

「良かった。

 いい話が聞けて。」

「はあ。」

「私もね、そろそろあっちに行こうと思ってて、

 会社辞めようかと思ってたら、

 社長が、こっちでちゃんと今回の企画成立させて、

 向こうに持ってけって、

 だから、無理やり企画まとめようとして、

 仲野君まで巻き込んじゃってごめんなさい。」


「あの、あっちって、
 アメリカですか?

 彼のところに?」


「うん。

 やっと親が許してくれて。

 なんとかなりそうなの。」


「そうですか、おめでとうございます。」

鮎川さんははにかんだように微笑んで、

「ありがとう。」

と、答えた。

その顔はきれいで幸せそうで、

やっぱり、こういう表情させられなきゃ嘘だ。

鮎川さんの笑顔昨日のありさと重なって、

胸にぐっときた。




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