緋~隠された恋情
数学が苦手な私は、

平の教える数字のマジックに

すっかり魅入られた。

アッという間に成績を上げ、

平均以下だったその成績は上位に食い込むまでになった。

おかげで、平は、私からも、兄からも絶大な信頼を得たのだ。

あの日まで、




それは突然の出来事だった。


兄が組合の旅行で2日ほど家を空けることになった。

「平、ありさのこと頼むな。」

「ああ」

「ありさ、店もないしゆっくり過ごせるぞ。」

そう言って、

安心しきった顔で出かけて行った。


そう、何の心配もしていない。


お兄ちゃんは世間の人間は

自分のように善良な人間しかいないと、疑いすらしていない。


ましてや、自分の親友。


手放しで、

妹を委ねたのだ。


まさか親友が自分裏切るなど思いもしなかっただろう。




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