緋~隠された恋情
「店もしばらく休みにしたから、

 一緒に彼を探しに行こう。」


「お兄ちゃんだってそれじゃあ…」


「大事な妹の一大事だ、店なんかやってられるか」



「お兄ちゃん…ん…ありがと…」


あったかくて何度も火傷して硬くなった大きな手のひらが、

私の頭を撫でる。


あったかくて、切なくて


まだ私が一途にお兄ちゃんの背中を追いかけていた頃に

タイムトリップした。


お兄ちゃんが好き。


手放しでそう思えた頃に…


あの悪魔、平とも、

徹平とも、

関係のないあの頃に戻れたらいいのに…


神さま、今だけ、少しだけ

お兄ちゃんを好きなだけの私で居させてください。


少しだけ……

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