緋~隠された恋情
隣県の哲平の部屋に、

二人で向かうローカル線、


人の少ない車内、お兄ちゃんと並んで揺られる。


「ほら。」


お兄ちゃんが手渡されたコロッケサンド。


「何も口にしてないだろ?倒れちゃうぞさっきみたいに。」

朝食のスープを保温ポットから

カップに移して手渡してくれた。


電車が揺れてこぼれそうになる。


「おっと。」


焦ったお兄ちゃんの顔がすぐ近くで照れ笑いした。


くすっ


「良かった。やっと笑った。」


「ありがと、お兄ちゃん。」


「食う前に先にお礼言うな。

 早く食わないと溢れっぞ!」


「ん、いただきます。」


コロッケサンド片手にスープを流し込む、

体の中にほの温かいスープがじんわり染み渡っていく。

滞っていた私の時間が流れ始めた。







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