緋~隠された恋情
シオンと名乗った彼は、
まるで今まで亡くしていた半身の様に
俺のかけた部分を満たしてくれた。
その日から、俺は部屋には戻らず、
シオンの部屋で過ごした。
俺、そしてシオンも
お互いの存在に夢中だった。
今まで一度も持ったことの無い満足感と高揚感
何かに夢中になったことの無い俺に
今まで知ることのできなかったものを彼に感じた。
愛することの充実感を
得て有頂天だった。
愛せるものがある。
それは人として生きることを、
生きる価値のあるモノだと、
初めて感じることができた。
二人がかけがえのないものになればなるほど、
俺の指に光るシルバーの輝きは、
時折、本当にそれでいいのかと、
問いかけていた。
シオンとこれからどうなるにしろ、
ありさ以外の人間とこういう関係になったことは、
彼女とは早くけじめをつけるべきだろう。
けど、本当にそれでいいのか?
まじめすぎる俺は、シオンを選ぶことを
躊躇していた。
そしてそれは
俺とシオンの間に少しずつ溝を形成していった。
ありさが婚約者だということは、
最初の身の上話の時に話していたが、
それは、お互いが深い関係になればなるほど、
シオンにとって許せないこととなっていった。
それは俺が思うより歪んだ形でシオンの中に蓄積し、
俺とありさの電話での会話を
偶然聞いてしまったシオンは、
悲しさよりも、憎悪が先行したのだ。
あの日…