緋~隠された恋情
振り返ろうとした時に
冷たいものが私の右頬をかすめた。
それが鋭利なものであることを示すように、
かすめただけなのに、
頬に冷たい感触。
拭った指に赤い液体が伝わった。
血だ。
「きゃあっ」
反射的に出た声にはじかれるように、
「お前なんてしんじゃえ!」
再び、包丁を握って再び飛びかかってきたのは
さっきの彼だった。
「なっ!」
彼の目は狂気と悲しみそして怒りに震えていた。
あまりの恐ろしさに声すら出ない。
「ありさ!」
そう言って飛び込んで来たのは
お兄ちゃん。
私は恐怖で身動きできなかった。
「シオン!やめろ!」
徹平の呼びかける声は、
さらに彼の怒りを増長させるようだった。
「許さない、
徹平を僕から取り上げる奴なんて、
婚約者なんて死んじゃえばいい!」
でも、振り上げた手は下ろされることはなかった。
お兄ちゃんがその腕を掴んではがいじめにしたからだ。
「離せ!」
「離さない!
その子は俺の大事な子なんだ。」
「そんなの知らない!離せ!」
ドスッ
肘でお兄ちゃんの体を思いきり打ちつけた。
鈍い音とともに、
つかんでいた手の力が緩んだのだろう。
一瞬、
「うっ」となった、
お兄ちゃんの手をすり抜けた彼が、
私に向かって包丁を突き立てた。
「きゃあっ」
冷たいものが私の右頬をかすめた。
それが鋭利なものであることを示すように、
かすめただけなのに、
頬に冷たい感触。
拭った指に赤い液体が伝わった。
血だ。
「きゃあっ」
反射的に出た声にはじかれるように、
「お前なんてしんじゃえ!」
再び、包丁を握って再び飛びかかってきたのは
さっきの彼だった。
「なっ!」
彼の目は狂気と悲しみそして怒りに震えていた。
あまりの恐ろしさに声すら出ない。
「ありさ!」
そう言って飛び込んで来たのは
お兄ちゃん。
私は恐怖で身動きできなかった。
「シオン!やめろ!」
徹平の呼びかける声は、
さらに彼の怒りを増長させるようだった。
「許さない、
徹平を僕から取り上げる奴なんて、
婚約者なんて死んじゃえばいい!」
でも、振り上げた手は下ろされることはなかった。
お兄ちゃんがその腕を掴んではがいじめにしたからだ。
「離せ!」
「離さない!
その子は俺の大事な子なんだ。」
「そんなの知らない!離せ!」
ドスッ
肘でお兄ちゃんの体を思いきり打ちつけた。
鈍い音とともに、
つかんでいた手の力が緩んだのだろう。
一瞬、
「うっ」となった、
お兄ちゃんの手をすり抜けた彼が、
私に向かって包丁を突き立てた。
「きゃあっ」