緋~隠された恋情
「ありさ、救急車呼んで。

 俺よりお兄さんの方が傷が深そうだ

 早く!」


「…う…ぁ…」


「ありさ!しっかりして!

 今お兄さん助けられるのはありさなんだから!」


息が苦しい、

徹平の声が響く。


助ける


助けなきゃ……



 どうしてあの時動けたのか


ただ、助けなくちゃその一念だったと思う。


救急車…119番


無我夢中だった。


沢山の人がへやに入ってきて、

意識を失い、血の気の無くなったお兄ちゃんは

担架に乗って運ばれていった。


私は、意識を半分飛ばしながらお兄ちゃんのそばに付き添った。


本当に落ち着いて来たのは、

病院のベッドの上で、

看護師さんに話しかけられたときだった。




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