緋~隠された恋情
別れなんて、
あっけないものなんだ。
まして愛し合っていたわけじゃなかった私たち、
片方が解消を望めば、NOなどという答えがあるはずない。
徹平は、あの子を愛しているという。
愛するゆえの歪んだ行動を、
受け止めて、
会社もやめて彼が戻るのを待つ。
愛することを諦めていた徹平の口から、
愛しているという言葉を聞くことは、
切ないけれど、嬉しいと思った。
どこにもいる場所のなかった徹平が、
自分の居場所を見つけたのだから。
「そっか、徹平は私から卒業するんだね。」
「…ん。ありさ、俺、ありさのこと好きだったよ。
おれのそばにいてくれてありがとう。」
「私も好きだったよ徹平。」
ふふふっと笑ってから、
席を立った徹平は少し寂しそうで、
でも、
以前のような諦めているような顔ではなかった。
これは私たちの逃げるだけの人生からの
卒業式なのかもしれないね。
「うん。あ、玄関まで送ってくよ。」
「いいよ、お兄さんのそばにいてやって。
なあ、ありさ、いい加減覚悟決めろよ。」
徹平はお兄ちゃんのベッドを目を細めて見つめて、
私に視線を戻して、
にっと笑った。
「愛されてんじゃんか。
何を悩む必要があるの?
かっこいいよね。
あんなふうに身体を張って助けられたら、
お前の好きになる理由がわかった気がするよ。
ありさが頼れるのはお兄さんだけじゃないか。
お兄さんだって判ってるさ。
きっとお前が言ってたみたいに悪い風にはならないよ。」
「…うん
そう…だよね。」
あっけないものなんだ。
まして愛し合っていたわけじゃなかった私たち、
片方が解消を望めば、NOなどという答えがあるはずない。
徹平は、あの子を愛しているという。
愛するゆえの歪んだ行動を、
受け止めて、
会社もやめて彼が戻るのを待つ。
愛することを諦めていた徹平の口から、
愛しているという言葉を聞くことは、
切ないけれど、嬉しいと思った。
どこにもいる場所のなかった徹平が、
自分の居場所を見つけたのだから。
「そっか、徹平は私から卒業するんだね。」
「…ん。ありさ、俺、ありさのこと好きだったよ。
おれのそばにいてくれてありがとう。」
「私も好きだったよ徹平。」
ふふふっと笑ってから、
席を立った徹平は少し寂しそうで、
でも、
以前のような諦めているような顔ではなかった。
これは私たちの逃げるだけの人生からの
卒業式なのかもしれないね。
「うん。あ、玄関まで送ってくよ。」
「いいよ、お兄さんのそばにいてやって。
なあ、ありさ、いい加減覚悟決めろよ。」
徹平はお兄ちゃんのベッドを目を細めて見つめて、
私に視線を戻して、
にっと笑った。
「愛されてんじゃんか。
何を悩む必要があるの?
かっこいいよね。
あんなふうに身体を張って助けられたら、
お前の好きになる理由がわかった気がするよ。
ありさが頼れるのはお兄さんだけじゃないか。
お兄さんだって判ってるさ。
きっとお前が言ってたみたいに悪い風にはならないよ。」
「…うん
そう…だよね。」