緋~隠された恋情
お兄ちゃんは、青白い顔を少し赤らめて、
照れくさそうに瞬きした。
いつも健康優良児で、パリパリ動くお兄ちゃんが、
こんなふうに病人になるって、
(あれ、怪我人というのか?)
初めてじゃない?
まじまじとお兄ちゃんの顔を見た。
こんな間近で見るのってそういえば久しぶりかもしれない。
私を取り巻く偽りの様々なことを、
お兄ちゃんに知られたくなくて、顔を見られていなかったきがする。
すっと通った鼻筋と
大きな二重のタレ目気味な目
大きめな薄い唇が
バランスよく配置されている。
なんて綺麗なんだろう。
病人になって、尚更ぐっとキレイさが強調されて艶っぽさがプラスされて…
「ありさ…」
その綺麗な顔にある唇が、
私の名前を呼ぶ…
「ありさ」
「…」
「ありさ、
お前平気か?」
ハッ。
私ったらお兄ちゃんに見とれてて、
もう、ばかばか、
「な、何?」
「って、平気か?
さっき、八代くんと別れたんだろ?」
「き、聞いてたの??」
「んー。
正直言って、意識がはっきりしたのほんのちょっと前。
夢見てるみたいなぼんやりした感じで、
お前らの会話、聞いてた。」
「聞いてたって…」
どこからどこまで?
あたしたち結構濃い会話してたと思うんだけど…