緋~隠された恋情
たとえ、俺がどんな愚行をしたところで、

握りつぶされ、

将来人の上に立つという場所はきちんと用意されていた。


それは成長を重ねるあいだに俺の人格を歪め黒く染めた。


だまってレールを歩くことで、

無駄な努力なしで手に入る地位を、

失おうとは思っていない。

ただ、親族には、

それまでに残される自由な時間を、

自分の思うがままに生きさせてもらうことを条件に、

今の自由を満喫しているのだ。



そんな俺に、

俺と正反対の男との出会いがあった。



『仲野新』

俺が生徒会長する、高等部の副会長として、

俺の前に現れた。

ひと目で人の視線を集めるような容貌。

明るい笑顔、

あたたかさを感じる言動。

人を魅了する人間というのは、

こんなふうに、存在するのだと初めて理解した。

俺が黒だとすれば

やつは白。

太陽のようなあいつ。


どんな場所をも明るく照らす。


そこにいても自ら光っているのではない月のような俺を

まるで飲み込んで一緒に輝かせてくれる男。


興味を持って近づき、

なおさら正反対な身の上だったことを知る。


小さな肉屋の店先に捨てられた子供。


養子になっって掴んだ幸せも、

あっという間に事故で失った。

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