緋~隠された恋情
「彼女に理想の女性像を重ねるのは結構ですが、
あなたの大好きなボーカロイドと違って、
飯も食えば排泄もする、
性欲だってあるんだから。」
「き、君はっ失敬だな。
俺をば馬鹿にするだけならともかく
ボカロや、か、彼女を愚弄するなんて…」
脂ぎったオデコをさらに脂ぎらせて真っ赤になって憤慨する様は、
愉快だ。
「はは、冗談ですよ本気にしないでください。
それじゃ俺、彼女に伝えて相談しなきゃならんので、」
手を軽く上げながら、爆笑したくなる気持ちを抑えた。
「う植木先生!
ちょっと、じ冗談って何がですか!」
追いすがる小出に、笑いかけながら。
「全部ですよ。」
と、言葉を残した。
今夜は、あいつ悶々として眠れないかもな。
いい年した廚二オタ野郎。
ありさを偶像化して、
オカズにして一人でやってんだろう。
悪いがあいつは俺の玩具なんだよ。
俺は車のドアを締めると、
ぷはっ
っと吹き出し大笑いした。
ひとしきり笑ったあと、
急にあいつが恋しくなって呟いた。
「ありさ……」