緋~隠された恋情
肉屋であった仲野精肉店は、

生き残りをかけて、

デリカテッセンNAKAとして、

リニューアルし、

OL相手のコロッケ屋を始めた。


このコロッケが雑誌に取り上げられ、

夕方は行列ができるほどの有名店である。


1日2千個以上売り上げる。


人気の原因は味や、値段もさることながら、

お兄ちゃんがイケメンということだ。


お兄ちゃんは一昔前のアイドルグループに

一人はいる甘いマスク。


そのお兄ちゃんの笑顔見たさに

OLたちは今日もランチに並んで、

こぞってコロッケを買う。

とはいえ夕方の客層は夜の食卓を飾る1品として

主婦や、一人暮らしの老人や、会社員になる


私はエプロンを付けタッパーにサラダや唐揚げを盛り付ける。


コロッケだけでは、利率が少ないためこうやって、

夕食用のサイドメニューのお惣菜も、用意しておくのだ。


山ほどコロッケを作り山ほど売っても、

大した収入ではない。


それでも兄はコロッケを作り、売り続ける。


それがなくなった両親への恩返しなのだとでも言うように。

父さんが残したコロッケの味を

ずっと守り続けている、


恩返し……

兄、

お兄ちゃんは、

雪の日にうちの前に

置き去りにされた男の子だった。


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