緋~隠された恋情
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駅から5分も歩かないで、

私たちの住む商店街。


昔は、たくさんの人達が、ここを目指して集まった。


このあたりの流行の発信地、笑顔の集う場所だった。


いつの間にかオフィスに囲まれ、

すっかり寂れてしまったこの街.


ここで私たちは育った。


お兄ちゃんと二人、

まるで昔に戻ったように寄り添って、

商店街の入口に立つ。


「なんか、懐かしいね。」

「だな。

 まだ、2週間しか経ってないのにな。」

ははっと笑って

店の横の通用口の鍵を開ける。

カチャリ

その音が、再び始まる日常を告げる。


私は、離れていくお兄ちゃんの背中


急に切なくなった私。


「お兄ちゃん!」












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