緋~隠された恋情
「ん?」

振り返りキョトンとした顔のお兄ちゃんに、

後ろから抱きついた。


「ど、し、た?」

「ううん…」


そう返事をしながら

もっと、腰に巻きつけた手に力を入れた。


「どこにもいかないよ?大丈夫。」


優しい言葉が上から降ってきた。


そうなんだ、

うちに戻って一気に安心して、そして急に怖くなったんだ。

もう少しで失ったかもしれなかった、この先の私たちの未来を…


「ん」


お兄ちゃんはそっと背中をなでて、

そしてまた、

「大丈夫。」

とつぶやいた。



優しい手


この優しい手を離したくない。


決心した。

傷ついても構わない、


私、この人が誇れるものになりたい。







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