緋~隠された恋情
帰宅した夜、

商店街のみんなが

真央さんのお店で快気祝いを開いてくれた。


みんなに囲まれてお兄ちゃんはとても嬉しそうで、

私も、

ここが、お兄ちゃんの居場所なのだと嬉しくなる。


真央さんを手伝いながら、

厨房を片付けていると、

真央さんが小声で聞いてきた。


「刺されたって聞いたけど、一体どうして?」


「詳しくは言えないんですけど、


 お兄ちゃんは巻き込まれただけなんです。」


「そう。


 まあいいわ。


 良くなってよかった。


 もうすっかりいいのかしら?


 NAKANOが閉まっていると

 商店街は随分閑散としてしまって

 って、もともと閑散としてるのだけどね。」



真央さんはけらけらっと笑って、

急に真面目な顔になった。


「ありさちゃん。

 私、今月で店を閉めようと思うの。


 なんかこのまま続けてもジリ貧だし、

 田舎に帰って親孝行しようかなって思って。」


「そんな、さみしいです。」


「ありさちゃんにも、新くんにもお世話になったわね。

 頑張って。」


私に会うと、いつも浮かない顔をしていた真央さん。


でも、っ今日はすっきりした顔をしている。


このところ、そのことを考えていたせいのかもしれない。


結論を出した今、その顔に迷いや曇りが

すっかりなくなったのだと見て取れた。


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