桜の舞い散る頃に 【短編】

「はい、お待たせ」

そう言ってマスターは、私の目の前に美味しそうなクロワッサンにハムとチーズを挟んだものとサラダが乗ったプレートを置いた。


「美味しそう!!」

そう言った私に

「旨いよ」

と、笑いながら答えたマスター。

空腹感が限界に達し、自家製ドレッシングのかかったサラダをほおばった。

「ん~~美味しい!!マスター、これ超美味しいよ」

「だから、旨いって」

白髪混じりの口髭が、よりマスターをちょいワルに見せていた。

私は夢中でクロワッサンとサラダを食べた。

そんな私を、相変わらずの笑顔でカウンターの椅子に座りながら眺めて居るマスター。

「なんか、こう見ると美咲ちゃんも大人の女性になったよね」

そう、マスターとは親の代からの知り合いだから、私が産まれた時から知っていたんだ。

全てを食べ終わった私は、満足気に

「そうだよ、もう二十歳なんだから」

「あれっ、もうそんなになるの?」

そう言いながら、マスターはコーヒーを置く変わりに、空になったプレートをさげた。

< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop