桜の舞い散る頃に 【短編】
「はい、お待たせ」
そう言ってマスターは、私の目の前に美味しそうなクロワッサンにハムとチーズを挟んだものとサラダが乗ったプレートを置いた。
「美味しそう!!」
そう言った私に
「旨いよ」
と、笑いながら答えたマスター。
空腹感が限界に達し、自家製ドレッシングのかかったサラダをほおばった。
「ん~~美味しい!!マスター、これ超美味しいよ」
「だから、旨いって」
白髪混じりの口髭が、よりマスターをちょいワルに見せていた。
私は夢中でクロワッサンとサラダを食べた。
そんな私を、相変わらずの笑顔でカウンターの椅子に座りながら眺めて居るマスター。
「なんか、こう見ると美咲ちゃんも大人の女性になったよね」
そう、マスターとは親の代からの知り合いだから、私が産まれた時から知っていたんだ。
全てを食べ終わった私は、満足気に
「そうだよ、もう二十歳なんだから」
「あれっ、もうそんなになるの?」
そう言いながら、マスターはコーヒーを置く変わりに、空になったプレートをさげた。