桜の舞い散る頃に 【短編】
食後のコーヒーは、私の心を落ち着かせる薬になったな。
久しぶりにマスターとゆっくり昔話に花を咲かせた。
店内の時計を見た。
なかなか、良い時間かもね。
名残惜しくもあり、早く約束の場所に行きたい気持ちもある。
一つ大きく深呼吸をすると
「マスター行くわ」
そう言って立ち上がった。
お金を支払いにレジに向かうと
「今日はいらない」
「なんで?」
そう聞く私に
「今日は、美咲ちゃんの誕生日だろうが」
そう言って、目を細めながら笑っていた。
「覚えてたの?!ありがとうマスター」
私はマスターに手を振ると、満面の笑みで公園に向かった。
桜並木を通り抜けると、いつもの景色が広がっていた。
今日、思い出が一つ終わりを告げるかもしれない。
私ははやる気持ちを抑えながら、一歩一歩丘を登って行った。