桜の舞い散る頃に 【短編】
十九歳の春休み
「美咲、明日の飲み会来ない?」
ある春休み中の昼下がり。
大学で同じ学部の親友梨沙と、いつもの様にカフェでダラダラと話していた。
梨沙はグラスを傾けながら、底に有る残りのオレンジジュースをゴクゴクと飲み干していた。
「それって、飲み会って言う名の合コンでしょ?」
私は、梨沙を上目づかいで見ながら聞いてみる。
「ん~~まぁ、そんなところかな」
「じゃあ、行かない」
そう言った私を、呆れ顔で見つめる梨沙。
「まさか、まだ例の彼の事を待ってるんじゃないでしょうね?」
「待ってる訳じゃないけど……」
これは本当の事。
待ってる訳じゃない。
ただ、あの日の約束を純粋に破りたくないだけなんだ。
「向こうだって、もう覚えて無いわよ」
グサッと刺さる梨沙の一言。
忘れてるって分かりきってるのに、何だか少しだけ期待もしている私が居た事に気づいた。