桜の舞い散る頃に 【短編】
玄関に置いてある鏡で髪型をチェックすると、勢い良くドアを開けた。
少し肌寒いけれど、良い感じに春を感じる陽気にいやが上にもテンションが上がる。
鍵を閉めると一気に階段を駆け下りた。
まだ早いから、いつものカフェでブランチを食べる事にしようかな。
桜の並木道を通り抜け、一軒のこじんまりとしたカフェに入った。
「おっ、いらっしゃい美咲ちゃん」
いつものマスターが、カウンターから顔を覗かせていた。
「おはよう、マスター。おすすめランチセットね」
私は定位置である、窓際の一番奥の席に座りながら注文する。
「はいよ。それにしても、今日はなんだかめかしこんでるけど、さてはデートかな?」
昔ながらのコーヒーマシンが、ポコポコと音を鳴らしていた。
「うーん、一人デートかな」
「そうかい」
マスターはそう言うと、驚きもせずにニコニコと笑いながら、焼きあがったクロワッサンをお皿に乗せた。