鬼畜店長

「店長こんばんはー」



19時を過ぎたころ、なんだかよさげなバーの入り口をくぐり、カウンターにいる店長にご挨拶。


あたしたちを見つけた店長の顔が、一瞬驚き、一瞬緩み、一瞬険しくなり、最終的に営業スマイルに落ち着いた。

なんだって百面相だなあ。




「何しに来たんだよ」



「飲みに来たに決まってるじゃないですか!今日はお客さんですよあたし!」



「デートか」


「え、あ、違いますよ。こいつはおまけです。一人で来るの寂しいのでついてきてもらいました」



今日のメインイベントは店長にありがとうを伝えることだからね!

完全にタイミング逃したけど!!




「そうかおまけクン。わざわざご苦労様」


「いや、オレはデートのつもりなんですけどね」


「デートじゃないってば。ささ、飲むぞー」




デートだとか何言ってるんだか。

適当なこと言うなって感じですよ全く。



カウンター席に二人ならんで座って、カウンターの向こう側にいる店長と向かい合う。




「はい、いつもの」


「わ、ありがとうございます」



あたしが何を頼むのかもうわかっていたらしく、パッと出てきたのは鮮やかなオレンジ色。



「君はどーするんだね?ビール?」


「ビールでいいですけど……なんか今のやり取りかっこいいっすね」



ずるいよなーとかなんとかぶつぶつ言っているが、あたしに言っているわけではないようで店長を見つめるイケメン君。



…なんでもいいけど、あたし早くこれ飲みたいんですけど。




< 140 / 244 >

この作品をシェア

pagetop