鬼畜店長

「お疲れ様でしたー」


ようやく業務が終了し、ラスト業務にあたったあたし、店長、もう一人のバイトのお姉さんでお店を出たが、お姉さんはさっさと別の方向に歩き出してしまう。

いつものことである。



「店長、はいこれ。もう15日になっちゃいましたけど、ハッピーバレンタイン!」



このタイミングは確実に二人になれるとわかっていたため、最初からここで渡そうと思っていたのだ。

店長には特別に、奮発して今人気の高級チョコ店の詰め合わせを買ってきた。



「……中身は手作り?」


「いえ!店長が手作り嫌いなのわかってるんで、買ってきました!人気のとこのなんで、絶対…」

「いらね」

「おいしいはず……って、はぁ?!」



今この人なんて言った?いらね?いらないって言ったの?!なんで?意味わかんなすぎて軽くパニックだよあたし!



「何言ってるんですか、店長?店長チョコ好きなのに、いらないんですか?」


「いや、手作りじゃないんならいらね」


「店長手作り嫌いって散々…」


「たいして知らねえ奴からの手作りは食わないって言ったんだ。お前はたいして知らねぇ奴じゃないだろ」


「だ、だとしても、店長去年だって、あたしのやつ殺人クッキーとか…てか去年あたしのへったくそな手作りクッキー食べてたじゃん!なんで忘れてたんだあたし!!」


「と、言うことで、手作りしてこい」


「…じゃあこれは本当に要らないんですね?せっかく買ってきたのに…」


「それも食う。お前が作ったのも食う」


「…店長は食いしん坊だなぁ」




< 193 / 244 >

この作品をシェア

pagetop