鬼畜店長
「あれ…?なんで閉められ…」
「お母さん!めっちゃイケメンだー!!姉ちゃんのくせにイケメン連れてきたー!やべぇ!すっげーかっけぇ人だった!なんで?!なんで姉ちゃんのくせに?!」
玄関が閉められた次の瞬間そんな叫び声が中から聞こえてきた。
正真正銘弟の声である。
すごい失礼なことを言われた気がするのは気のせいじゃないはずだ。
「ぶっ 丸聞こえなんだけど」
店長が肩を振るわせて笑っている。
こんな悪意ゼロの笑顔はなかなか見れないレア笑顔だよ!
「今のアホ全開なのが弟です」
「なるほど。確かにお前が何人もいるってのは本当らしい」
それは暗にあたしがアホ全開だと言ってますか?否めない。
「あんた出迎えに行ったのに閉めてきてどうすんの馬鹿!誰に似てた?!芸能人で言うと?!」
「うーん…芸能人で例えようがないくらいイケメンだった!すっげーキリッとしてた!」
「ちょっとお母さんも早く見たい!早く出迎えてきなさいよ!」
「そんなんいうならお母さんが行けばいいだろ!オレ一回閉めちゃったから行きにくい!」
「嫌よお母さん恥ずかしいもの!イケメンと聞いたら余計ドキドキしちゃうじゃないの!早く行きなさい馬鹿!」
「さっきからバカバカ言い過ぎだよ!というかこんなことしてる場合じゃなくね?!二人とも外で待ってるよ!早く!お母さん早く開けてあげて!」
「出迎えはあんたの係りって決めたでしょ!早く仕事を全うしなさい!」
……。
何やってんだあの二人はーー!!
「お、お恥ずかしい限りでございます」
隣で笑い過ぎて若干呼吸困難になっている店長の背中をそっとさすってあげていると、がちゃっと控えめに玄関が開いた。
「おかえり、それといらっしゃい」
結局玄関を開けてくれたのはのほほんとしたお父さんでした。