【完】小野くん症候群
縮まったと思ったら遠ざかる距離。
曖昧でもどかしくてじれったくて。
あたしたちの距離も
いつもこんな感じだった。
一階の渡り廊下へと差し掛かったとき、いきなりの段差に足がもつれ
「ねえ待っ────いだっ」
「っ内田!?」
そのままズベッと渡り廊下の板に落ちた。
同時に小野くんの焦ったような声。
近づいてくる足音。
ヒリヒリ、痛む足。
あたしを腕で顔を隠しながら
手探りで小野くんの裾を掴んだ。
「内田、起き上がれるか?」
「…のくん…」
「え、なんて…
「逃げないでよ…っ」
「、」
待てって言われたら
いくらでも待つし
こういうの迷惑なら
ハッキリ言ってほしい。
小野くんの口から言ってほしい。