図書室で、恋。
1.主は物静か
雲一つない澄み渡った青空。
眩しいくらいの太陽の光。
初夏を感じさせるカラッとした空気。
「おばさん、おはよ!」
「ひぃちゃん、おはよう。もう悠太ったらまだ起きないんだから。」
「起こしてくる!」
そんな会話を悠太の家の玄関先でおばさんとして、慣れたように私は靴を脱ぎ右に入ってすぐの階段を駆け上がる。
ダッダッダッ…
決して上品とは言えない音を立てた上り方。
だって早くしないと学校遅刻しちゃうよ、なぁんて雑な性格の自分に言い訳をして私は勢いよく扉を開けた。
「悠太~っいい加減起きろ~!!」
私はベットにうずくまっている悠太に飛び乗る。
こんなこと、日常茶飯事。
「んー…」
眩しそうにしながらも目を開け。くわぁ…とあくびをする悠太。
そしてやっとつぶやいた言葉は「重い。」と、眉をひそめてそう言った。
「アンタ、今何時だと思ってんの~?」
「え、何時?」
「もう7時50分!遅刻するっ!」
私がそう言うと、悠太はやっと目が覚めたのか、「げっ、やべっ!」とベットから慌てて飛び起きた。
それと同時にベットから吹っ飛ばされる私。
「いったいなー!」
そんな私の言葉はまるで無視をし、「陽彩、今日の分の教科書とノート、カバン中突っ込んで!」とバタバタ階段を下りながら悠太は言った。
そして下の階から「なんで起こしてくんねぇの!」「何回も起こしたわよ!」といつものように悠太とおばさんの声が聞こえた。
私は呆れたようにその場で肩をすくめ、悠太の荷物を準備した。