図書室で、恋。


シンと静まり返る自転車置き場。

言葉を失っていたのは私だけで、悠太は痛みからか顔をしかめており、それ以外に関しては至って普通だった。

「大丈夫なの?」

それが私の口から出た精一杯の言葉。


頭の中は、グルグルと様々な感情で埋め尽くされていた。

なんて言ったらいいのか、自分でも訳が分からなくて、まるでフリーズしてしまったかのように感じた。

そして、たかが数分のことが、長く長く、何時間も経ったようにも感じた。


「陽彩、まだいたんだな。」

「……。」


まだ……

悠太の口から二度も出た、まだという言葉。


私は唇をぎゅっと噛み締めた。

あたりが暗くなってきたのが幸いだ、こんな姿はまともに見られたくない。


「あ、当たり前でしょ…」

「処置に時間かかっちまってよ。もう帰ったかと思ったわ。」

「……。」

「あー、いって…くそ、どれくらいで完治すんのかな。」

「……。」

「陽彩?どうしたんだよ?」

悠太が自転車に座り、俯く私を上から見る。


「何、遅かったから怒ってんの?いや、なら帰っても良かったのに。」

「……。」

「毎日毎日待ってんのも大変だろ?別に帰ったって…「待ってない方が良かったの?」」

「え?」

私は悠太を見上げる。


「まだって……迷惑だった?」

「は?」

突然のことのせいか悠太はポカンとした。


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