図書室で、恋。
「まったく、陽彩ってば。どうせ悠太くんのことでも考えてたんでしょう?」
「まっさか~」
古典の授業後、呆れながら笑う瑠璃に、私はたじたじ。
「今日も帰りは図書室?」
「うん、もちろん~!」
「本当に毎日毎日…逆にすごいよ。それなら陽彩も部活入ればいいのに。」
「いいのいいの。体力使いたくないし。」
「あーはいはい。悠太くんのことに全体力を注ぐのね。」
「そうそう。さすが瑠璃!瑠璃も部活頑張ってね。」
次期テニス部のキャプテンの瑠璃。瑠璃のテニスをしている姿はとてもかっこいいんだ。
反対に私は部活に所属はしていない、特に何かに興味があるわけじゃないしね。
ながーい1日が終わると、私は決まって図書室へと向かう。
人気のない図書室へ続くひんやりとした廊下を私は軽快に歩く。
この高校の図書室はほとんど機能されていなかった。
図書室を使う人なんて、まずいない。
まず課題の量が多すぎて本を読む時間なんて生徒にはなかった。
そして、ここから一駅先に市の大きな図書館があるため、図書室で勉強をするということもなかった。
授業で年に1回使うか使わないかくらいで、こんなじめじめっとした利用のしにくい図書室は、だれも使っていない。
そんな図書室にも一応、司書の人がいるわけで…
「やーまーとくんっ!」
私はそう言って、生徒も先生もいない図書室にいつも足を踏み入れるのであった。