君が居る世界
「…マジかよ。どうりで寒いわけだぜ。おい、ユウナ! 早く帰るぞ!」
「えぇ!? ちょっ…、待ってよ!」
気分が高揚しているユウナを差し置いて、俺は再び家路を急ぎ足で歩き出した。
…ありえねー。
雪なんて降ったら、余計に寒くなってくるじゃん。
黒色のネックウォーマーに顔を深く埋めて、これから訪れるであろう今以上の寒さから逃げるように、ずかずかと大股で道を歩いた。
そんな俺の背中にはユウナの「あ!」という驚きと、それからすぐにニマニマした声が届く。
「そっか~! リョウスケって、雪とか冷たいものとか……そもそも冬が苦手だったんだよね!」
俺の足がピタリと止まる。
振り向かなくてもユウナの表情が容易に想像できてしまい、急に嫌気がさしてしまった。
……どうせユウナのことだ。
昔によくからかっていた俺の弱点を思い出し、どうやってそれでからかおうかと悪巧みに心を弾ませているに決まってる。
近所に住んでいることもあり家族ぐるみで仲が良い幼馴染のユウナは、俺のことを弱点も含めてよく知っているはずだから。
もちろん俺も、ユウナのことはよく分かっているつもり。