君が居る世界



「…なんだよ。そんなに冬が苦手なのがおもしれーかよ?」



渋々と振り返ると、ユウナはなぜか笑いを堪えながら立ち止まった俺に歩み寄ってきているところだった。

ちょっと、意外な反応。



ムスッとした表情で置き去りにしてしまったユウナを待っていると、ユウナは笑いを堪えられなくなって吹き出した。



「だってさ~! リョウスケって昔は冬になると、ウサギみたいに小刻みに震えてたじゃん? それが今や、いかついおっさんみたいになっちゃって…。あんまり冬でも、寒そうにしなくなったよね~」


「おい、おっさんってなんだよ!? 俺はこれでも16歳だからな!?」


「ハハッ! その顔で同い年とか言われたくないー!」


「しょうがねーだろ。正真正銘、16歳なんだから!」



何を言っても、ユウナは俺の顔を指差してゲラゲラと笑った。



それにしても、本当に失礼だな…。そんなに笑うなんて。



昔みたいに冬が苦手で凍えてばかりいる弱っちい自分が嫌で、身体を鍛えてここまで冬の寒さを耐えられるようになったっていうのに。



まぁ、小学生のときに地元の少年野球チームに入ってから今まで野球を続けてきたことが、身体が強くなった一番の理由かもしれねーけど。



おかげで最近は今みたいにユウナに“おっさん”ってからかわれるほど図体もでかくなったし、なぜか顔まで老けて見えるけどさ。



……男なら、守りたいものを守れるほど強い人間になりてーって思うじゃん?

心も、身体も。



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