学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……流れている景色は真っ暗で、外灯の一つも発見する事はできない。まるでトンネルの中を走行しているかのように。
「お、おかしいぞ。新座の近くにはトンネルなんてないはずだ。一体この電車はどこを走っているんだ?」
 俺は反対車線の電車に乗ってしまったのだろうか? いや、それなら客がいないなんてことは有り得ない。下りの電車なら終電であっても、いくらかの乗客はいるはずだ。こんな自分一人しか乗っていない状況は有り得ない。
 では、俺は行き先の違う貨物列車か何かに乗り込んでしまったのか? それも違う。明らかにこの電車は普通の電車だし、特別な行き先の電車が学校の駅から発車されるなんて聞いた事もない。
 俺は仕方なく辺りを見回してみた。
 ……本当に乗客がいない。少なくとも、この車両には俺以外の乗客の姿は無い。そして、連結部分から見える範囲でも乗客の姿は発見できない。
 電車は相変わらず無言で走り続ける。
「と、とにかく車掌にでも聞いてみるか」
 俺は酔いが醒めていくのを感じながら、列車の先頭方向に向かって歩き出した。
 ……2両ほど歩いてきたが、この間に一人の乗客の姿も見なかった。
「おいおい、本当に誰も乗ってないのか?」
 独り言を呟く俺だったが、もうこの時には軽いパニックに陥りかけていた。だって考えられないだろ? 自分が乗っていた電車が無人なんだぜ? しかもいつまでも駅につかない。こんな事があったら誰だって異常事態だと思う筈だ。
「おおい! 誰かいないのか!」
 俺はほとんど走るように先頭車両へと向かった。
 ……俺が最初に乗り込んだ車両は8車両編成の先頭から7番目だ。そして、二つ、三つ目と先頭へ向かったのだから、今いる車両は先頭から4両目ということになる。そして、先頭から3両目に入ろうかという所で、初めて明らかな車内の異変に気がついた。
「な、なんだこりゃ?」
 3両目と4両目を繋ぐ連結部のドアが奇妙な形に歪んでいたのだ。いったいどうしたらこんなに曲がってしまうのだろうか? 鉄で出来たスライド式のドアは引いても歪みのためか、なかなか横に動かない。
「う、くおおおお!」
 ほんの僅かに開いたドアに指と足先を入れ、身体を少しずつ挟みいれて中の様子を窺う。
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