学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……先頭車両。
 もう逃げるかのように前へと向かった俺が見たものは地獄のような光景だった。
 先頭車両の前部半分はちぎり取られたかのようになくなっており、車内は電車の残骸と瓦礫の山で埋め尽くされていた。10人近く確認できる乗客はみな息絶えていた。ほとんど全員が瓦礫の下敷きとなっていて、逃げる間もなく一瞬で押しつぶされた事が窺えた。
 聞こえてくるのは泣き叫ぶ子供の声、そして遠くから聞こえてくる救急車のサイレンの音。どこからか野次馬の声も聞こえて来る気がした。
「列車……事故か」
 俺はふと思い出した。一年前、この路線で最終電車が原因不明の脱線事故を起こし、二十名にも及ぶ死傷者が出た事を。


 ……。
「俺は新座の駅のホームのイスで寝ているのを駅員さんに起こしてもらって気がついたんだ。一年前の電車事故、ローカル線で深夜の事故だったから、新聞の地方欄に少し載る程度しか人々の心に残らない事件だった。忘れさられようとしている霊たちからの悲しいメッセージだったのかもしれないな」
 大ちゃんさんは静かに話を終えた。
「そうですね……。私たちは常に尊い犠牲の上に生きている訳ですね」
 何とも物悲しいエピソードだった。不幸にして亡くなった人の霊は、やはり浮かばれずに漂っているものなのだろうか?
 そして続く紫乃さんの話は、どうやら大ちゃんさんに続き、悲しみ湛えたエピソードのようである。

残り34話


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